みなさん、こんにちは。
横浜市金沢区と横須賀の境にある、ピアノとヴァイオリンのレッスンをしている「かなでのわ音楽教室」です。
突然ですが、皆さんはピアノを演奏するとき「暗譜」について考えたことはありますか?
今回お話ししたいのは、暗譜の「仕方」についてです。
ピアノを20年以上続けているピアノ講師である私は、この「暗譜」に長年苦しめられました。暗譜にも、きちんとやり方があるのです。
その事を、ピアノを学ぶ皆さまと共有できたらと思います。
なぜ、小さな子供はすぐに暗譜できるのか?
さて、ピアノを習いたての小さなお子さまがいる方は、「音を全て記憶し、楽譜を見ずに弾く」お子さまの姿を見たことがあるのではないでしょうか?
例えば、国語の教科書1ページを丸々記憶することは、決して容易でないことは明らかです。かけ算だって、何度も何度も復唱しやっとのことで覚えます。
ピアノの曲を暗譜する、つまりは「譜面を記憶する」なんて、到底難しそうなことを、ピアノを習う子供は安易とこなしてしまうのです。
なぜでしょうか?
暗譜に失敗。コンクールで舞台を降りた中学生
反対に、あるピアノコンクールで暗譜が飛んでしまい、曲の途中で舞台を降りてしまうという、会場中が凍りついた出来事がありました。
この時の奏者は、中学生です。
小学生や幼児に比べて、記憶力も集中力もある中学生が、舞台上で暗譜が飛んでしまうという悲劇。
これは、とってもよく起こることなのです。
そして、ピアノを長年の友にする人なら、誰もが経験することなのです。想像しただけで、恐ろしいですよね。
こんな事、できれば避けて通りたいところです。
暗譜が飛んでしまった2つの落とし穴とは?
では、暗譜が飛んでしまった中学生は、練習不足だったのでしょうか? 中には、そう仰る先生がいるかもしれません。もちろん、要因の一つには挙げられます。
しかし、暗譜が飛んでしまった出来事には、2つの落とし穴がありました。
その前に、「記憶」に関する興味深いお話をしたいと思います。
人の脳は、海馬という部位が記憶を司っていますが、ある研究では、ピアノを弾く人は記憶をする時「視覚野」も一緒に働いていることがわかっています。
その事をふまえて、お話を進めます。
① 本能(耳で音を覚えていた)
まずは、落とし穴1つめです。
小さな子供が楽譜を見ずに安易とピアノを弾けるのは、聴力の発達が大人より優れていて音を覚えるのが速い、いわゆる「本能」だからです。
言い方を変えると、楽譜を読むのが遅いから、耳で音を「確実に」覚えてしまえるからです。人間の聴力のピークは5歳までと言われています。また記憶力もいいです。
「弾いていたらいつの間にか覚えてしまっていた。」
これは、子どもの最強の特権です。しかし裏を返せば大きな落とし穴でもあります。
「いつの間にか覚えていた」のまま、成長してからも楽譜に気を遣わないでいると、いつの間にか聴力も記憶力も衰え、また緊張を覚えるようになり、楽譜が飛んでしまう、という舞台で恥ずかしい思いをしてしまうきっかけになります。
「本能で覚えてしまう」。これが、落とし穴の1つめです。
② 相対音感(環境の違いでミスタッチしたと勘違いしたる)
落とし穴2つめは、相対音感によるものです。
こちらは、誰もが当てはまる訳ではありませんが、日頃から「相対音感」で音を聴く割合の多い方です。
今回の中学生の失敗も、こちらと言えるでしょう。
私もこのタイプでした。
初めて暗譜が飛んだのは10歳でした。
舞台での挫折を味わうには、かなり早い年齢です。
その時は、言葉通り頭が真っ白になったのですが、原因が分からないまま、トラウマを引きずり高校生になってしまいました。
自分は心が弱いのだと思っていましたが、周りの人たちを観察し、音の聴き方が人と違うことに気がつきました。
それが、相対音感です。
本番では、いつもと違うピアノ。違う空気感。観客が入った時の音の跳ね返り。
すべてが、ステージに立って初めて味わう環境下で演奏をします。
暗譜を「耳」と「手」で記憶していた私は、緊張を含んだ真新しい環境で、「ド」が「ド」に聴こえなかったのです。
ミスタッチをしたと思い、鍵盤を見ますが、弾く場所は合っています。
でも聴こえてくる音が違う。頭はパニックになり、あとの演奏は酷いものでした。
普段から私は、気分により音が色々な音に聴こえていました。
不協和音も、不協と感じません。
ですから、絶対音感を持たない私は、自分の耳を過信し(当時はそこまで考えてもいませんでしたが)、緊張した精神状態でまともに耳が作用しませんでした。
この相対音感による耳の誤認、これが落とし穴の2つ目です。
私は極端な方ですが、ほとんどの方が実はこの「相対音感」と言われています。
今すぐできる2つの暗譜の仕方
では、頭が真っ白にならずに暗譜をするにはどうしたらいいのか、ご紹介します。
暗譜の仕方①曲と向き合い理由や意味を理解する
楽譜が読めるようになったら、しっかり譜面に書いてある音符や表現と向き合い、頭で考え音楽と向き合うことが大切です。
それができれば、たとえ「耳」のみで譜面を記憶していても、音楽に「理由」や「意味」を付けられていれば、どんな環境でも音が迷子になる心配はなくなるでしょう。
暗譜の仕方②自分の特性を知る
暗譜をするときは、自分の特性を知ることが急務になります。
私は、相対音感というお話をしましたが、念には念を「目」で記憶するのが得意であれば譜面を丸ごと頭に思い浮かべられるまでしっかり記憶するのが向いていると思います。
もしあなたが普段ピアノを弾く時、
「楽譜を読むのが遅い人」は、「耳」がいいのかもしれません。
「音を聴き取るのが苦手な人」は、「譜読み」が速いかもしれません。
自分の特性をしっかり理解して、定着しやすい方法で暗譜をしていきましょう。
ピアノの暗譜についてのまとめ
以上今回は、ピアノの暗譜の「仕方」についてのお話でした。
・ピアノの弾く人の脳は、海馬と一緒に「視覚野」が働いている
・暗譜に失敗する落とし穴は、①本能で覚える ②相対音感の耳の聞き間違え
・暗譜の仕方は、①曲の本質を理解する ②自分の特性を知る
でした。
教える先生達でさえ、暗譜の仕方は人それぞれなのです。これからピアノの道を志す方、指導者方々の今後に、少しでも参考になれば幸いです。
金沢区の金沢八景、金沢文庫、六浦の近く
横須賀市の追浜、京急田浦の近くにある、かなでのわ音楽教室です。
ピアノとヴァイオリンのレッスンをしています。
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